良い歯医者は、患者に定期検診をうながす

良い歯医者の条件
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これだけスマホが社会に浸透すると、もはやケータイショップへ足を運んだことのない人はいないんじゃあないのかな。「わたしゃガラケーで十分。しばらく買い換えるつもりはないよ」と言う人も、いずれ年貢の納め時はやってくる。スマホであれガラケーであれ、機械である以上は耐用年数というものがあるし、どんなに大切に扱ったとしてもバッテリーの寿命は本体のそれよりずっと短い。いずれにせよ、ケータイショップへ出向く日は否が応でもやってくるのだ。 

かくいうわたしも、ガラケーの調子が怪しくなったのでケータイショップへ。自慢じゃないけどパソコンはなんなく使える。わざわざモバイルでネット接続する気もない。買い換えるならフィーチャーフォン(ガラケー)でいいと思っていた。ところが陳列されているのはスマホばかり。しかもガラケーよりずいぶん高価だ。ふと視線を走らせると『他社からの乗り換え、0円!』とある。つまり携帯キャリア各社(Docomo、au、SoftBank)は、古くからのお得意様より、よそからやって来た一見さんを優遇するんだな。新規の顧客を獲得してナンボなのは、ケータイが国民に行き渡ったきょう日の経営戦略としてはわかりますけど、お得意様を大切にしてきた日本的商売慣習はここには存在しないんですね。というわけで、どうせスマホにするんならばと、わたしも長年にわたり料金を払い続けてきた携帯キャリアとオサラバすることになった。メアドは変わっちゃうけど、LINEやFacebookがあれば問題ないですしね。 

さて本題。歯科に当てはめてみます。ホームドクターこそ開業医のベストだと考えているわたくしにしてみれば、携帯キャリア各社のやり方は釈然としない。つまり新規契約(新患)さえ獲得できれば、古くからの顧客(リコール患者)はぞんざいに扱ってもいいということにはなりはしないか?……まあ、穿った見方ではありますけどね(笑) でも、“新規ゼロ円”に充当するお金は誰が負担しているのか……ここを考えればみなさん、少しは理解してくれるかな。 

例えば大きなむし歯ができて、神経の治療をしたとしましょう。ボロボロに近かったけれど、なんとか神経の治療も済み、金属冠をかぶせて治療を終えたとします。そして患者さんが希望すれば、わたしは半年後なり1年後なりに、定期健診の時期が来たことを知らせるハガキを投函することにしています。その大きな目的は“自分の仕事がきちんとしたものであったか確認するため”なんです。これ、新車を買った時にだって、ディーラーから“定期点検のお知らせ”が届きますよね。あれとおんなじ。なにか不具合はございませんでしたでしょうか?って……。ただ、こんな態度で定期健診を行っている歯医者は少ないかもしれません。 

職人肌だと自認するわたしは、自分の治療は、気障な言い方だけど、一種の作品だと思っております(自分で書いてみると、やっぱり気障だな)。患者の口に入れたものはもちろん、顎の調子、歯並び、歯周病のメンテなど、未来永劫にバッチリであることを願うのです。大工の棟梁が、立派な甍を指さして「あの豪邸はオイラが作ったんでぃ」と悦に入るみたいなもんかな。仮に、定期健診でトラブルが見つかったなら、早期に治療し、かつての“作品”が長持ちするように手だてする。その方が治療期間、患者に与える苦痛、費用のすべてにおいて負担が少なくなるはずで、それが良医たる姿勢だと思うのです。 

ところが歯医者の料金体系は、それでは儲からないカラクリになっています。つまり「口の中になにかを入れてナンボ」。だから、きっちりメンテしてあげればあげるほど、新規の売り上げが発生しにくく、長持ちする治療をする歯医者ほど儲からないとも言える。そんな意味では、定期健診は自己満足なのかもね。だけど自虐的では決してない。自分の作品を末永く使ってもらえるならば、それは無上の悦びになる。お金より大切なものって、ありますよね。 

でも、すべての歯医者が、こんな気持ちで定期健診をしているとはかぎらない。健診にやって来る患者を、まるで秋になったらやってくるカモや鮭くらいにしか思っていない先生も少なからずいるのもまた悲しい事実。だからもし、自分の管理に自信があるのに、定期健診に応じるたびに、あそこが悪い、ここが悪い、とばかりに少なからぬ治療を勧められるのは、もしかしたら「入れてナンボ」と思っている先生なのかもね。つまり定期健診で訪れても、常に新規の一見さんってわけです。が、ご安心あれ。こんなダメ歯医者を見抜くのは簡単。彼らは健診結果を詳しく説明しないはずですから。 

定期健診は是非とも応じるべきです。何回か訪れるたびに互いに気心もしれてくる。歯医者にしてみれば、患者さんの名前を聞いただけで顔と口の中の状況はもちろん、家族構成や健康に及ぼす諸事情までが思い浮かび、トラブルへの対処も早い。患者側のメリットは、やはり安心感でしょうかね、いろんな意味での。 

だけど、ネットや女性週刊誌に派手な広告を打って大量の新規患者を集めている先生のことを思うと、正直辛くなるんですね。このあたりが、冒頭に述べた携帯キャリアに通じるのですが、この問題、かなり根が深く、これについては今後、継続的に語らせていただきます。 

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